「は?」
優季の府抜けた声がした。
「……いった、…………」
叩かれた左頬をさする。
泳がした視線をもとに戻すと、お母さんは怒りに拳を震わせていて。
「ごめんなさい……」
そんな陳腐な言葉しか出てこなかった。
あぁまた殴られてしまうじゃないか。
ほんと、あたしってボキャブラリーが少ない。
覚悟を決めて、目を強く閉じ、歯を食い縛ると、溝尾に激痛が走る。
「っう゛ッ‼」
殴られた勢いで壁に激突し、背中を打つ。
「ゴホッ…ゴホッ…」
腹の中の物、出てきそうなんだけど。
気持ち悪、い。最悪。
カツカツカツ。
まるで、激痛が起こるまでのカウントダウンのよう。
お母さんのブーツのヒールの音が響く。
こっちに近づいてくる。
次、どこ殴られるのかな。痛いの嫌だなぁ。
けど、自業自得だ。
だって、お母さんからお父さんを奪ったんだから。
「…ッ‼‼う、…あ、ツッ」
痛い痛い痛いッ
お母さんのピンヒールがお腹にねじ込む。
耐えろ。耐えろ。
「ッあッ…いっ…たいッ」
「千早さんっ、美沙が痛がってるから止めてくださいッ」
優季があたしを助けようとしている。
あたしが引き起こした自業自得なのに。
助けなくてもいいのに。
語尾も震えちゃってるじゃん。怖いんでしょ?
分かるよ。いつも優しくて笑顔が絶えなかったお母さんがこんな感じになっちゃって。
あたしも頭が着いていかないよ。
「千早さんっ」
「……………」
「コイツ、びょ「 だから、何?」
優季の声に被ったお母さんの低い声
アハハ。
もう乾いた笑みしか出てこない。
もうあたしはお母さんに娘としてカウントされてないらしい。

