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あの電子音は聞こえない。
聞こえるのは、ゲームの音とストーブの静かな燃える音。
あたしはかなり調子がよくて、優季の家でゲームをして、大勝利を収めていた。
外は雪が降っていて、遊べるような状態ではない。
雪合戦とか雪だるま作りとか、したいけれど風邪をひかせなくないと優季が頑なに許可してくれないのだ。
しんしんと雪が舞う外。
ぬくぬくと温かな部屋。
愉快なゲームの音が部屋に響いて、賑やかな効果音がなる。
と、その時。
鳴ったのは、電話。
優季の家の電話。
この家には、あたしと優季しかいなくて。
あたしは関係ないので、バタバタ音の鳴る方へとかけていく彼の背中を見ながら、オレンジジュースを飲んでいた。
しんしんしん。雪は止みそうにない。
もう2月である今日。
もう少しであたしの誕生日。
お父さんに、誕生日プレゼントもねだったし、もう楽しみに待つしかない。
幸せな日だった。何もないよくある普通の日だった。
けれど。
どうやら神様は、普通をぶっ壊したいらしい。
「美沙ッ、病院に急ぐぞ」
受話器を乱雑において、彼はあたしの腕を強く掴んだ。
テレビからは、部屋の空気に不釣り合いの軽快な音楽が流れている。
見えるのは白。
大嫌いな色であり、見慣れている色。
急に腕を引かれて、リビングを出た。
ひんやりとする廊下に思わず、顔をしかめた。
「優季…、何があったの…ッ?」
嫌な予感がする。
何も聞いてないのに、耳を塞ぎたくなる。
嫌だ。怖い。
お願いだから、言わないで。
雪はしんしんと降っている。
白に紛れながら、彼の口から発せられた赤を連想させる言葉は、あたしの心を掻き乱すのには十分で。
「お前のお父さんが事故に遭った」
次の瞬間、目の前が真っ白になった。

