朝霧双葉。
それは俺の2才下の妹。
病弱で、しょっちゅう倒れては病院で入院し、親を呼ぶ。
倒れるのなら、もう一生入院しとけばいいのに。
そんな黒い感情が芽生える。
この感情は知ってる。分かってる。
俺は妹に"嫉妬"をしているんだ。
今日も、また、
「ごめんね。また双葉が倒れて。夕食は冷蔵庫の中にあるから、勝手に食べて」
「分かってる」
母さんは俺じゃなくて妹を優先させた。
病弱だから仕方ない。
自分の娘だから大切に思っていることだってしょうがない。
けど、一回くらいいいじゃないか。
俺を優先させたって。
妹は病を患っているとか、そういうのじゃなくて、ただ体が生まれつき弱い。
最近はあまり倒れなくなったが、全く倒れなくなった、というわけではない。
病弱と言えば、藤崎ちゃんもとい、藤崎さくらを思い出す。
彼女は病を患いながらも、強くあり続けた。
誰にも弱味を見せなかった。
…というのは、偏見で。
志貴だけには涙を見せていた気がする。
妹も彼女みたいに強かったらよかったのに。
彼女を見てしまったら、そう思ってしまった。
「なんで双葉ばっか」
ポツリと溢れた本音は空虚な部屋に吸い込まれる。
双葉のために、ご飯は野菜が少し多めの健康なものばかり。
俺は野菜が嫌いなのに。
双葉のために、遠出はしない。
俺は一回くらい家族と遠くに出掛けてみたい。
双葉のために、…
双葉双葉煩い。
何で双葉ばっか。
「双葉双葉うっせーの。んなことで、やってれるか」
そう言って、家を飛び出したのは2週間前の事である。

