side.Y
「…寝たか」
俺は俺の胸に顔をうずめている彼女見る。
──『あたし、優季には惚れないよ』
あの言葉は刺さった。
心に容赦なく刺さった。
「好きになれよ俺のこと」
手で彼女の髪をとげば、するりするりと手の間から抜けていく。
望んではいけないことを望んでしまっている。
その葛藤に苦しんで苦しんで。
挙げ句の果てには、何回も心を傷つけられる。
けれど、一緒にいたい。
矛盾。
結局、一緒にいることを選ぶ。
はっきり、惚れないとか言わないで欲しかった。
少しくらい見込みはあるとか言ってくれたらいいのに。
あぁ。それはそれで困るな。
だって、俺は、────
「この気持ち、バレないようにしなくちゃな」
この気持ちを伝える気はさらさらない。
俺はコイツの兄貴みたいな存在であると決めたから。
あの時、彼女を見て決めたから。
辛いのは俺じゃなくて彼女だから。
何が志貴先輩が大好き、だ。
もう大概にして欲しい。
「親父に連絡しないと…」
そう言えばコイツ、宿題してないとか言ってたのに寝てよかったのかよ。
…知らね。俺知らね。
別に俺のせいじゃないし。
寝たバカが悪い。
…けど。
「しょうがない。5時に起こしてやるか」
…何だかんだで、俺はコイツに甘い。
壁に掛かっている白と黒のモノトーンの時計はもう3時を指していて。
全然寝る時間は、ない。
けど、まぁ。
「美沙が大丈夫なら何でもいいや」
そう思っている自分がいて、心底恨む。

