「泣けよ」
「何そのS発言」
「お前、人の優しさを何だと思ってる」
「ごめんってー」
泣くなんて、やだ。
なんか、悲劇のヒロインぶってる気がするもん。
あたしは確かに、母子家庭で、しかも妹と母に見放されて、それに、…
「…ゆ、うき…?」
目の前に広がったのは優季の服。
優季の匂いがする。
優しいお花みたいな、桜みたいな匂いだ。
けれど、その香りの半分は香水で形成されている。
あたしが選んだ香水を何年間もずっとつけてくれている彼。
彼は、優しい人。
「泣き顔見られたくないんだろ?」
「……………」
図星です。
「なら、こうしとけば見えないだろ?」
「………………」
優季クン、女扱いがお上手ですね。
「あたし、優季には惚れないよ」
「惚れられたらコッチが困る」
「ヤな奴」
「どーも」
「褒めてないしー」
御言葉に甘えようかな。
あたしは繋いだ手を離して、ぎゅっと手を彼のお腹に回す。
「…見ないでよ」
「もちろん」
その勿論が怪しいんだってば。
そう思いつつも、彼の服に顔を押し付ける。
こうなったら、この服、鼻水とヨダレだらけにしてやる。
あたしはゆっくり貯めていた涙を流す。
なんで、なんで、なんで。
あたしなの。
なんで、なんで、……………………
あたしがこんな思いしなきゃいけないの。

