「あ、橋本くん。入り口に隣のクラスの子が呼んでたよ?」
果奈は優季に教室の入り口を指を指した。
その指先を辿ると、顔を真っ赤に染めたおしとやかそうな女の子が一人。
……あんなおしとやかな子まで手ぇ出してんのか。
マジあり得ない。
という視線を彼に送る。
が、いつものようにスルーされるのはよくある事。
「ありがとう栗田さん」
優季は紳士スマイルを果奈にプレゼントし、教室の入り口に歩いていった。
栗田果奈。それが彼女の本名だ。
「みーちゃん。槻倉先輩どうだった?」
「んー?いつも通りのクールドライ。ア○ヒ、スーパードライ」
「お酒のCMになってるよー」
「ドライと言ったらスーパードライでしょ」
「え、違うでしょ。ドライはドライバーの略じゃないの?」
……マジか。
「いや、ドはドーナツ。ラはラズベリー。イは…………イタリアン・メレンゲだな」
と戻っていた優季が、スイーツ関連用語を言っていく。
手に淡い青色の封筒を持っているのは、見てなかったにしよう。
うん。そうしよう。
「いや、それはない。てか、イタリアン・メレンゲって少し無理矢理じゃありませんでした‼?」
「いや、どれもピッタリだ」
……ダメだこりゃ。
優季サン、病院に行くことをおすすめ致します。

