……また、真っ暗……。

 おばあちゃんのスープで、何とか持ってたけど……

 もう……力が……

 闇にまどろむ。意識が少しずつ、暗い海へ沈んでいく。

 …………

 ……

 ……楓!

 ……今……

(和也さん……の、声……?)

 ……暗闇の中、ぼうっと銀色の光が広がった。
(月……の光……?)
「え……」
 右ポケットから……光が洩れていた。手を入れる。

「これ……」
 ――和也さんからもらった、水晶の薔薇。手のひらの上できらきら輝いて……とても、綺麗……。
 
 右手に握りしめる。銀の光が全身を包み込む。


 ……楓!


(和也さん……呼んで……る……?)

 薔薇から、銀色の光の道が延びる。暗闇の中、一筋の光が、ずっとずっと向こうまで続いてる。

 薔薇を握ったまま、光の道に導かれるように、飛んだ。

 ……楓っ!

 少しずつ、和也さんの声が大きくなる。

(も……う、頭……が……)

 朦朧とする意識の中、ただ和也さんの声だけが、私を繋ぎ止めてた。

 ……長い長い、暗いトンネルの先に、

 ……光、が見えた。

 右手を伸ばす。握りしめた薔薇の花が、熱くなる。

 ……何か、薄い膜のようなものが、破れた。

 ……ずるり……

 ……身体が、下、に落ち……そのまま、意識がなくなった……。