「烏丸。何かあったのか?」


「……はぁ?」

何かあったもなにも、つい先程先輩女子に
因縁つけられましたけど。

「教室が異様に静かだ。何かあったのかと
聞いているのだか、口はないのか?」

…いちいちイラつくな、櫻庭芥。

「…別に。」

面倒くさくなって、何もなかった事にした。

「そうか。ならいい。」

あっさりと席につく、櫻庭芥。

(………なんか、変な人。)

赤く染まった夕方の空を眺める彼の漆黒の
瞳は、ほんの少しだけ、哀しみの色が
浮かんでいた。