私が頑張れば頑張るほど、裏目に出ることも多く、そんな不甲斐ない自分が嫌で、何度も涙することもあった。
 


 
 自分を不甲斐ないと泣いたことは、今まではなく、初めてのことだった。



 
 そんな感情を持ったのは、同期が庶務課にはいなかったため、一年目でどのくらい仕事が出来るようになるのか、自分と比べる人がいなかったせいもある。




 しかし、私が自分自身で、不甲斐ないと思うことに拍車をかけたのは、彼の存在があったからかもしれない。




 彼は、たとえ失敗をしても、中途半端なことをしても、怒るどころか、見えないところで、誰に対してもフォローしてくれた。




 いつもとは違う仕事を任された日、私は、周りの人がやっているところを見ていたから出来るだろうと、解らないことがあっても、多分こうだろうと人に聞かずに、仕事を進めていた。




 黙々と仕事をしている私の姿を見て、彼は、解らない事があって、行き詰っていないかと心配して、様子を見に来てくれた。




 その時、彼は、私は間違って、仕事を進めていることに気がついたが、私が曖昧だった事を人に聞かず、勝手に判断していた事を、決して怒らなかった。




 それどころか、優しく間違いを指摘して、正しい方法を親切に教えてくれたのだ。




 また、違う日は、朝会社に行くと、私の机の上に、今日やる初めての仕事のファイルが置いてあった。




 そのファイルには、初めてでも仕事がスムーズに誰でも、やりやすいようにと、メモ書きが置いてあったのだ。




 昨日、自分の仕事が終わってから、わざわざ彼が、仕事が解り易い様にと、置いておいてくれたのだ。