「お母さん。ごめーん。寝てた。」
「寝てたって、あんたねぇ…。いつもぐうたらしてて、」
「あーもう。お説教はいいよ。はやくやろ。」
「はぁ。じゃあ、雑巾がけしてちょうだいね。」
「はぁい。」
冷たいけど、これも遊びにいくためっ!がんばるかっ!
数分後…。
「…ん?あれ?なにこの染み…?」
窓の下の床を拭いているとき、ちょうどタンスの影になっている所に丸の三つ繋がったような黒い染みがあった。
「おかーさん?おかーさん!」
特別気になった訳ではないけど、何故か私は聞かなくてはいけないような気がして聞いてしまった。
「はいはい。何?」
「ねぇ。この染み…何?」
「あんた、覚えてないの?あんたが六歳の頃、蟻を潰してできた染みなのよ」
「つぶしたぁ?気持ち悪っ!」
「あんたねぇ…。でも、不思議よねぇ?潰したって言ってたからティッシュ持ってきたのに死骸が残らないんだもの。まるで、蟻が染みそのものになっちゃった見たいに…。なーんてね。冗談よ。びっくりした?」
「びっくりしたよっ!」
じょうだんかー。当たり前だよね。蟻が染みになるなんてあり得ないし。
どうせ、マジックかなんかで書いたんでしょ。私を驚かせるために。
そう思った私はまた、お母さんをほっといて雑巾がけを再開した。



