「ねえ。健吾さん。なんで、蟻の染みの事を知っていたの?」
健吾さんはニヤッと笑った。
私はその表情にゾクッとした。
「鈍いかと思ってたけど、結構鋭いじゃん。」
急に口調が変わった健吾さんに私は戸惑いを隠せなかった。
「俺はね?ある、変わった仕事をしているんだ。」
「変わった仕事?」
「ああ。死者が憎んだ相手を殺す事。」
「死者が憎んだ…」
「そ。心当たりある?」
「え、と、」
私が殺した生き物…?
ま、さか。
いや、でも、ありえない。
「蟻、だよ。」
「なんで?!蟻なんて。そんなものっ!」
だって、ありよ?
「蟻も一つの命なんだよ。それをお前は殺した。わざとだよな。潰したんじゃない。まず、蟻の足を一本でずつ、とっていった。その次は触覚をハサミできった。そして、胴体を三つバラバラに切った。蟻は生き地獄を味わった。苦しみに悶え死んだ。そして、憎んだ。お前を。」
「そ、んなの。子供だったんだし、」
健吾さんは切れ長の目を細めてニヤリと笑った。