「ウソ…」


つぶやき。
他に言葉なんて出ないから。




「ウソ……ウソだよね……?」



ギュッ…と袖を握る。

力を込める私の手を振りきりもせず、彼はこう言い直した。


「ホント。小2の時、持病が悪化して、あの世に逝ったんだ…」


「……小2…」



…そうだ。そうちゃんとは2つ違いだった。

……と言うことは…



「…私が退院して、すぐってこと…?」



ガクガク震えてくる。
指先が小刻みに揺れて、力が抜けてく…。



「……そうだよ。お前と約束した2週間後に…兄貴は亡くなったんだ……!」



ザマミロ…って言い方?
なんでそんな言い方するの。



「そんな…」



……今日までどんなに会いたかったか…

そうちゃんに会えたら、何を言おうか…

ずっと、ずっと…

そればかりを考えてきたのに……!




「……やだ…そんなの…!」



膝の力が抜ける。
河口君の足元に、崩れるように座り込む。

目も唇も指先も、ブルブルとけいれんのように震えてる。

こんなに身体中の力が抜けたのなんて初めて。

まっすぐ…座ってもいられない……。



「ウソ……やだ……信じない!!」



信じたくない。
そうちゃんがこの世にいないなんて……信じられない!



「……なら信じるなよ!…でも、もう二度と兄貴には会えねぇんだ。お前もオレも、オレの両親もな…」



冷めたような言い方。
どうしてそんな言い方しかしないの。