またしても呆れる。
この人はホントに、すぐに私をバカにする。


(…何よ…そっちが急に止まるからでしょ!)


言いたいけど言えない。
この人の言ってることが真実なら、機嫌を損ねてはいけないから……。


「…何だよ」
「えっ⁉︎ 」


聞かれておいてドキッとする。
すぐ側に立ってる人が、こっちに向きを変えた。


「今、呼んだだろ。だから、何だって聞いてんだ!」
「あっ…」


そうだった。
私がとっさに呼び止めたんだ。
真実かどうか、確かめておきたくて。


「…今の話、ホントなの⁉︎ ホントに『そうちゃん』の弟なの⁉︎ 」


信じたくないけど、信じたい。
河口君がホントに弟なら、『そうちゃん』のことが知りたい…!




じ…と目を見る。
真実はいつも目の中にあるって、ママが言ってた。


「……ホントだよ…」



朝からウソばっか言ってた人が認める。
ふわっとした安心感が心の中に広がってく。



「……教えて!」


とっさに頼んだ。


「教えて!そうちゃんは元気⁉︎ 」



ドキドキする。
幼い日の思い出の中、彼はいつも入院着だった…。



似たまなざしの人が迷う。
どう言おうかって感じじゃない。
この迷い方は……




「………兄貴は死んだ…」


固い言い方で口を閉ざした。
ぎゅっと唇を噛む。
そのままの顔で、私を見下ろした。