……何を言いだしたかと思った。

目の前にいる人が近づいてくる。


「聞こえたか⁉︎ オレはお前が子供の頃、『また会おう』と約束した相手の弟。『そうちゃん』…『かわぐち そうま』の弟だよ…!」



(……ウソ……言ってるの…⁉︎ )


そう思ってしまった。
だって、この人は、私の大事な友達にウソをついてるから。


黙り込む私を冷めたように見てる。
その目はやっぱり、似てる気もする。
でも……



「ウソ!信じない!」


思いきり言い返した。
呆れてる人が息をつく。


「そうかよ。なら別にいい。兄貴のことは何も教えない」


向きを変えた。
体育館に戻ろうとせず、どっか行こうとする。


「河口君、どこ行くの⁉︎ 」


練習はまだ続いてる。
1年生は練習の後、片付けだってあるのに…。


「帰るんだよ。ダリぃから」


肩にタオルをかけ歩いてく。
このまま見逃してしまったら、さっき言った事もホントかどうか確かめられない。



「待って!!」



追いかけた。
友達の大事なカレシ。
もしかしたら、私の初恋の相手の弟かもしれない人……



「…待って!…待って!…河口君!!」



ジャージの背中、引っ張った。
呼び止めた人の足が止まり、私は勢いでぶつかった。


「イタッ!」


軽くこすって、鼻の頭がヒリヒリする。



「バカ。何やってんだよ!」