「トイレ行きまーす!」


わざと大きな声出した。
「きのした はるな」がどんなふうに話すのか、オレの知ったこっちゃねぇ……。


(ベラベラ喋んなよ…ニィちゃんはもう、この世にはいねぇんだから…)


会いたくても、二度と会えねぇ奴と、再会の約束をした。
あの場に行ったのはオレだったけど、アイツの目には、ニイちゃんに…「かわぐち そうま」に見えてた筈だ。


(くだらねぇ…)


そのくだらねぇ話を、今も引きずってるオレはもっとくだらねぇ奴だと思う。
あの時の『そうちゃん』はオレだったんだ…と言ってやったら、ヤツはどんな反応するだろう…。


(……喋る気ねぇけどな…)


ふ…と苦笑い。
オレとアイツの接点なんて、あのウソで固められた思い出だけで十分だ。


ほどほどに時間潰して部屋に帰った。
話はすっかり終わってて、ダイゴがヘタクソな歌を歌ってた。


「ひでぇ声!」


側に立って、一緒に歌った。
これでもオレは歌が意外に上手いと、自負してる方なんだ。




「…じゃあ、また、月曜日ね!」


駅前で別れる。
ピンクのワンピを着た「きのした はるな」が手を振る。
そいつに向かって、3人が振り返す。


「ソウヤ、お前も振ってやれよ!」


ダイゴが手を掴もうとする。


「よせっ!やめろ!」


抵抗する。オレ達って奴は、やっぱどっかガキっぽい。