「良かった。ソウヤ君、許してくれた!」


オトナなセンパイに救われる。
これだから、オレはこの人のことが好きなんだ。


目の前にいるビィーナスの白い肌とまつ毛にうっとりする。
そんな所を、ばっちりアイツに見られてた。


(まずっ…!)


慌てて目を逸らす。
センパイへの気持ちが見透かされたかもしれねぇ。
それがバレたら、オレは生きてけねぇ…。


(何も言うなよ…!)


向こうの様子を伺う。もうこっちを見ていない。

……ホッとする。
「きのした はるな」に弱み握られたら、恥ずくていてもたってもいられねぇ。




委員会の後、教室へ戻る。
無言で階段を上がるオレの後ろを「きのした はるな」が付いてくる。

これまでと同じ、距離を置いた関係。



「…あの…河口君…」


階段を上りながら、ヤツの口が開いた。
黙って知らん顔してた。
でも、ヤツの口は止まらなかった。


「あの…もしかして…穂波センパイのこと…」
「うっせぇ!」


大きな声を出した。ヤツの目が、大きく見開く。


「…それ以上言うな!言ったらシメるぞ!」


わざとそんな事を言う。
何かしようなんて気は、さらさらねぇ。


睨みつけて駆け上がる。
やっぱりオレの気持ちは気づかれてた。
それを確かめてどうするつもりなんだ。


(チクショー!オレのバカ!)


目で気持ちを語ってどうする!
そんな事するくらいなら、玉砕覚悟で告った方がまだマシだ!