「しっぽりなんかしてませんっ!ただ、こいつの話、聞いてただけですっ!」


墓穴掘り。後になって、しまった…と思った。


「ハルナちゃんの話?どんなの?」


聞かせてくれる?だって。



(…やめとけ!話すな!)



オレの思いなんか届く訳ねぇ。
「きのした はるな」は少し弱り顔を見せながらも、センパイに話し始めた。



「子供の頃の入院話なんですけど…」


親切にしてくれた男の子がいて、そいつがオレと同じ名前で「そうちゃん」と呼ばれてたこと。
退院したら「また会おうね」と約束してたこと。

「きのした はるな」は照れながらも、それらを甘えた口調で語った。


「…へぇー…その子って、ハルナちゃんの初恋の相手?」


センパイの目がキラキラしてる。
女って生き物は、どうもこのテの話が好きみたいだ…。


「きのした はるな」は声も出さずに、コクン…と頷いた。
ただでさえコンパクトな体が、余計に小さくなる。
側で見てるオレですら少しドキッとする。
センパイの方はと言うと……


「あ〜ん、もうっ!可愛いっ!」


キュッとヌイグルミのように抱きしめた。


「ハルナちゃんの初恋、可愛すぎる!それでそれで?その子とは出会えたの⁉︎ 」


ワクワクしてる。
「きのした はるな」は困ったように俯いて、首を横に振った。


「会ってないです。…正確には、会いに行けなかったんですけど…」