ギクッとするようなことを聞かれた。
「きのした はるな」の目がこっちを見る。
ウソをつくのも気が引ける。
でも、兄貴が亡くなったことは話せねぇ。


「…いるよ、どうしようもねぇのが一人…」


生き返ってもこねぇ奴がな。


「ふぅん…いいなぁ…」


本気で羨ましがってる。
死んだ兄貴なんて、いてもいなくても同じだってーのにーーーー



パチン、パチン…とホッチキスを留める手が早くなる。
こんな思い出話なんかしてる場合じゃねぇ。
早くこの場から逃げ出したい。


「…おいっ!早くしろよ!」


紙を引っ張る。
ビリッ…と破れた。


「あ…!」


「きのした はるな」の顔が青くなる。
オレが怒ると思ったらしく、ぎゅっと体を縮こまらせた。


「……仕方ねぇな。緒方さんに言って、一部もらってくるわ」


ホッとしたように立ち上がる。
とにかくオレは、この場から少し逃げれればそれでいーんだ。

ガラッと戸を開けて外へ出た。
廊下に立ってる二人。「ダイゴ」と「まりん」……


「なんだよ、お前ら。いつからそこにいたんだよ」


いるなら声くらいかけろよな…と、ドアを閉める。


「いや…なんか意外に仲良くしてたから、ジャマしちゃいけねーかなと思って…」


ダイゴが照れくさそうに話す。
まりんの方は朝のこともあってか、全く知らん顔。


「ジャマなんかじゃねぇよ!むしろ助かる!…アイツ、トロいからさ」