「……ねぇよ!…そんな経験!」


動悸が止まらねぇ。
頭の中に、あの日のことが浮かんでくる。


「や…やっぱり……そうよね…」


納得した割にはつまんなそうにする。
話を途切れさすのも妙な気がして、つい聞き返した。


「なんでそんな事聞くんだ?お前…入院したことあるのか⁉︎ 」


知ってるのに聞く。『確認作業』ってやつだ。


「う…うん…保育園通ってた頃ね。1ヶ月ほど、入院したことがあって…」
「へぇー…」


だからなんだよって感じで聞き流す。
それ以上のコトに興味ねぇって態度示してんのに、アイツには伝わってねぇ。


「その時ね…河口君と同じ名前の子がいて…とても親切にしてくれて……」


懐かしそうな顔。
「かわぐち そうま」と「かわぐち そうや」。
確かに似てはいるけど…。


「そうかよ…」


誰にでも優しかった兄貴を思い出す。そんな所が、ダイゴと似てる。


「退院する時、『また会おうね』って約束したけど……私…会いに行けなくて……」


紙を折ってる手が止まった。
指先が少し震えてるみたいな気がした。


「ちょ…ちょっと事情があって…理由は話せないんだけど……でも、だから河口君が…」
「そいつじゃねぇか…って思ったってことか⁉︎ 」


意地悪く聞いた。
ビクビクするような目をして、「きのした はるな」が頷く。


「う…うん……ごめん…私の勘違いです……」