(…分かってるよ!だからこーして、コイツのスピードに合わせてやってんじゃねぇか……)


メンドくせーと思いつつも口を出さず。


(あーあ…これじゃ今日は部活ムリだな…)


昼休みの図書当番は、先輩のクラスじゃなかった。
おかげで行っても、会うことができなかった。


(つまんねぇ…)


委員会の集まりは来週。それまでは、ほぼ部活以外接点なし。


(……早くしろよ)


呆れるように手元を見る。
小さい爪がキレイに切り揃えられてる。


(ちっせー手…まるでガキだな…)


「きのした はるな」はクラスでも一番背が小さい。
「エレメンタリー」だと言われても、仕方ねぇ所がある。



「……ご…ごめんね…」


急に謝られた。


「私…不器用で…時間かかってばかりで…」


懺悔の始まりかよ…と思った。そんなこと、最初から望んでねぇ。


当然のことながらムシ。
そんなこと口にするくらいなら、指動かせってんだ!



「あ…あの…河口君…」


オドオドしながら呼びやがる。
今日だけは口をきくって決めたから、いちおー返事してやるか。


「なんだよ」


別に機嫌悪かねぇけど無愛想。でも、これがオレ流だから。


「あ…あのね…変なコト聞くようだけど…こ、子供の頃にね、にゅ…入院とか…しなかった…⁉︎ 」


ドキン…!とするような単語を言う。
パチン…と留めた筈のホッチキスのすき間から、針が1個落っこちた。