ただのトロいだけのオンナ。それをいい子と思えるなんて、ダイゴはおかしい!


「…ハルナちゃん、コイツこんな事言ってるけど、ちゃんと一緒にやってくれるから安心してイイよ!」


後ろの席に向かって喋ってる。ムカつくったらねぇ!


(やってらんねぇ…!)


ガマン限界。
1時間目、バックレる!


「…おいっ!どこ行くんだよソウヤ!授業始まるぞ!」


ダイゴが呼ぶ。
でも、オレは振り向かずに外へ出た。

廊下は人もまばらで、誰もいねぇに等しい。
その廊下をウロついてたら、上の階から声がした。


(あの声は…!)


響くような高い声。
紛れもない、穂波センパイの声だ。



「アヤカー!1時間目、家庭科教室に移動だってー!」
「ホントー⁉︎ 急がなきゃー!」


柔らかな足音がする。
足音だけじゃねぇ。
センパイは、声もキレイな音を出す。


(……ガンバるか…オレも…)


なんでか急にそんな気になった。
方向転換して教室へ戻る。
帰ってきたオレを見て、ダイゴが安心したような顔をした。


「戻ってきたのかよ!不良!」


笑ってる。


「お前が心配してると思ったからだよ!」


こっちも笑う。
ゲンコツぶつけ合う。
オレとダイゴ、意気投合した時の二人の合図。


「…放課後、委員会の仕事が済んだら手伝ってやるよ!」


ダイゴらしい気配り。
オレが「きのした はるな」を避けてるから、奴なりにいろいろ考えてたんだ。