「嬉しかねぇよ!それより何だよ、その特別な仕事って!」


口の悪さに苦笑い。
緒方さんは教室を出ながら、振り返って教えてくれた。

「来月末に予定されてる『宿泊学習』の資料綴じ!カンタンだろ⁉︎ 」
「そんなの…別に今日しなくてもいいじゃん!」

明日でもいいだろ⁉︎…と言いたくなる。
要するにオレは、あいつと一緒になんかやりたくねぇんだ。

「観念しろってソウヤ!お前も『鶏』なら少しは責任を果たせ!」

最もらしい事言って逃げやがる。
緒方さんはオレが『他所者』の面倒を全然見てないことを、ちゃんと見てたんだ。


「くそっ!」


前の椅子を蹴る。
驚いた顔して前の奴が振り返る。
それをムシして、机にうっつぶした。


(サイアク…!なんで今日に限ってそんな仕事させんだよ!)


仮病にでもなってやろーか…と思う。
でも、ヘタな演技した所で、ミドリを心配させるだけだ。


(くそっ…ニィちゃんのことさえなきゃ、仮病使ったりもできるのに…)


病気となると、ミドリは人一倍神経を尖らせる。
おかげでオレは風邪ひとつも引けないほど、健康に育った。



「ついてねぇな」


ニコニコしながらダイゴが話しかけてくる。


「ダイゴ…代わってくれよ!」


泣きつく。クラス委員だろー…って。こんな時ばっか。


「ヤダよ!たまにはいいじゃん、ハルナちゃんとガンバレ!……あの子、フツウにいい子だよ!」
「…ちっ!何がいい子だよ!ケチッ!!」