(仕方ねぇ…テキトーにこなしとくか…)


諦めて教室に戻る。
オレの後ろの席、「きのした はるな」はビクついた顔でオレを見上げた。


「い…いろいろ知らないので…よろしくお願いします……」


こっちはムシしてるだけなのに、なんでこんなにオドオドするんだ…。
悪いことなんか、何もしてもねぇはずなのに。


「…1時間目と3時間目と5時間目、号令はお前がやれよ!残りはオレやる!」


今日だけ口きいといてやる。でないとやりづれぇから。


「う、うん…分かった…!」


ホッとしたような顔してやがる。
緊張が少し解けたような表情。…小さな唇が、ほんの少しだけ笑った。



(可愛い…)


そう思いかけて首を振る。
できもしない事を約束した相手。しかも、それを果たそうにも相手はもうこの世にいない。
兄貴の初恋の相手。本来なら、オレとの接点はない関係。



(なのに、どこまで続きやがんだよ…この偶然……)


ダイゴとの9年連続に匹敵しそうなくらいの勢い。
イヤミなほど続く偶然に、オレは正直ウンザリだった。



ホームルームの後、緒方さんに言われた。


「今日の日直には特別な仕事があるから。放課後、教室に残っとけよ!」

「ゲッ!」


思わず声が出る。

「…なんだソウヤ、その声は⁉︎ そんなに嬉しーか?」

ニヤついてる。

「お前が女子と日直なんて、初めてだもんなぁ」

羨ましーぞ!だって。バカにするな!