(見学だけじゃなかったのか…?)


「そうだよ!だから今日、見学に来てるんだよ!ほらっ、あそこ!」


体育館のカベに凭れて突っ立てる。
その姿をセンパイも確認した。


「…あの髪結んでる小さい子?」
「そっ。『他所者』だけど、中学ん時テニス部だったらしくて。高校入ったら別のがしたいって言ってたから、ここ推薦しといた」
「…そうかぁ…じゃあ是非入部してもらおう!声かけてくる!」


カモシカのような走り出す。


「カッケ〜!」


ダイゴがはしゃぐ。


「ホント…カッケーよな…」


見惚れる。さすがはオレのィーナスだ。

センパイはあっという間に「きのした はるな」の所に着いた。
いきなり話しかけられたヤツは、ビックリしたみたいでセンパイの顔に見入ってる。

練習に参加してみないかと誘われたらしく、遠慮がちに手を振った。



「…ハルナちゃん、入部するといいな…」


アイツを見ながらダイゴが呟いた。


「何⁉︎ ダイゴ、アイツが好きになったのか⁉︎ 」


さっきの仕返し。


「ば…!違うしっ!」
「へぇー、ホントに⁉︎ あやしーな!」


ラケットで突く。向こうも応戦。
オレ達って、つくづくガキだ。


「ソウヤとダイゴ!マジメに練習しろっ!走り込みさせるぞっ!」


緒方さんが怒鳴る。


「ヤバッ!マジにやろーぜ!」


コートで素振りの練習。
これ以上のゲンコツは、食らいたくねぇからな。