…でも、思うように病気は治らなくて…病状は悪くなる一方で……



『こんなゾーキなんかいらない!あっても何の役にも立たないっ!』


悔し涙を流して、お腹をゲンコツで叩こうとするのを、ミドリもカヨコも必死で止めた。
泣いて叫んで暴れても、兄貴の病気は…最後まで良くならなかった………。


(ボクがあんな約束をしてしまったから……)


浅はかな自分を責めた。
ゼッタイにまた会おう…!と言ったヤツの顔も、何度も頭に浮かんだ。


…… 幼いオレは、あいつを恨んだ。
できもしない約束をさせられた…と、子供心だから逆恨みした。


「きのした はるな」は……

自分と同じように、兄貴も治ると信じてた。
だから、あんな約束をしたーーーー


兄貴とは…似ても似つかない病気だったのにーーー
ただ、それを…知らずにいただけなのにーーー




『そうちゃん』………

そう呼んでたのは、カヨコと病院のスタッフ。

小児科病棟の常連患者だった兄貴は、誰からも好かれ、可愛がられる存在だった。
同じ病室の子だけでなく、違う病室の子にも慕われてた。


ただ一人、「きのした はるな」を除いてはーーーー




「きのした はるな」は、兄貴の隣の病室に入院してきた子だった。
なんの病気で入院してたかは知らないけど、1ヶ月ほど入院して、退院していった。


兄貴は新入りが来ると、いつも自分から挨拶に行くような子供だった。
だから、あいつが入ってきた時も、同じようにした。

でも…