幼いオレの大きな願い。


なのに、あいつは……



『うんっ!そうちゃんも退院したら、ゼッタイに会いに来てね!』



ーーーたったその一言で打ち破った。


退院できるかどうかも分からない兄貴の代わりとして、オレはとんでもない約束をした。



『うんっ!ゼッタイに会いに行くよ!』



退院してもしていなくても、会いに来て欲しかった。


ただ、その為だけに、してはいけない約束をしたーーーー



『じゃあ!また、ゼッタイに会おうね!』



飛び跳ねるように走って行った。その後ろ姿に向かって、心から叫ぶように言った。



『うんっ!また、ゼッタイに会おうっ!!』




ーーーーー「きのした はるな」に二度と会うこともなく、兄貴は死んだ。

果たせない約束をしたことも、今日までずっと、オレは思い出さずに暮らしてた……。

なのに…



「……なんで、今になって……」


当時、兄貴とオレの身長は、殆ど変わらなかった。
顔だってよく似てたし、声だって間違われることの方が多かった。


だから、あの時……あいつがオレのことを兄貴だと信じ込んでしまったのは仕方ない。

果たせもしない約束をして、それを兄貴に話さなきゃいけなかったのもしようがない……。


だけど……




『ゼッタイに治って、会いに行くんだ!』


呪文のように兄貴は言ってた。
ベッドの上で暮らす兄貴にとって、あいつは生きる糧みたいなものだった。