ばーちゃんをばーちゃんと言うと怒られるな。
『カヨコ』だ。『カヨコ』。
フルネームは『蒲生田 佳世子(かもうだ かよこ)』。

早口言葉みたいだって⁉︎
自分でもそう言って笑ってた。

でも、死んだ。
オレが中二の時に。

世話になったのに、何もしてやれないままだった。


『蒼弥は我慢強くてイイ子だね…』と、いつも褒めてくれてたのに…。




「ーーーくそっ!」


ほらみろ!
いらねぇ事まで思い出した。


制服を脱いで丸める。
ベッドの上に放る。
あのまま知らん顔してたら、またミドリに怒られるな。きっと…。




……話を元に戻すか。

兄貴は病院から最長でも2週間くらいしか退院できないような病状だった。
退院しても直ぐに病気が悪化して再入院。

幼いオレの相手もできない…って、よく悔しがってた。



『ソウヤ…学校通い出したら、一緒に登校しような!』


兄貴は『風見学園』に通ってた。自宅から一番近い学校。
体のことを考えて、ツヨシ達はそこへ通わせてたんだけど、実際、殆ど通えてなかった。
入学式の写真ですら、空中に浮かぶ遺影のようだったから。

それでもオレは、兄貴と一緒に『風見学園』に通える日が来ると信じてた。
病気もいつかは必ず治る…と、勝手に思い込んでた。


ーーーだから、実際お別れの日が来た時、信じられなかったんだ。