「ふぅ…」

ドサッ…とベッドにバッグを放り投げた。
ネクタイを緩めてボタンを外す。

「だりぃ…」

床に寝転ぶ。通い慣れた学校でも、初日はやっぱ疲れる。


(大丈夫かな…ダイゴのヤツ…)


不用意な言葉で相手を傷つけたと思ってるはずだ。
後悔なんてしても、仕方ねぇことなのに…。


「だから関わりたくねぇんだよ…あれこれ冷やかされるって知ってっから!」


冷やかす側にも悪気はねぇんだ。
でも、冷やかされる方はイヤなんだってこと、いい加減分かれよな。


「ガキだな…どいつもこいつも…」


傍観者のように呟いてしまう。
自分も同じように頼む…と、緒方さんに言われたのに…。


(でも、あれは相手が悪すぎる……)



思い出したくもない過去。
『きのした はるな』は、イヤでも兄貴を思い出させる…。



『河口爽真(かわぐち そうま)』

オレの二つ上の兄貴。小学校2年の時に亡くなった。

小さい頃から病気を患ってて、入退院を繰り返す日々だった。
あいつと会ったのも病室で。

その頃の兄貴の病状は不安定で、熱が出たり引いたりするような毎日を送ってたーーー




兄貴の入院費を稼ぐ為に、ミドリとツヨシは共働きをしてた。

…あっ、ちなみに言っとく。ツヨシは父親だから。


オレ達の両親は、入院費を稼ぐので忙しかった。
だから、オレの世話も兄貴の世話も、全部ばーちゃんがしてくれてたんだ。