(この暑い中、長袖かよ…)


呆れるように近づいた。
点滴の棒を左手で握ったまま、ボンヤリ噴水見てる患者。
肩までの髪の長さだから、アイツじゃねぇな…と思ったけど………



「……木下…」


オレの声にヤツが振り向いた。
この間よりも頬が痩けてる。しかも顔色、なんだか黒くねぇ?


「…河口君…」


少し鼻声っぽい。この季節に風邪か?


「…何やってんだよ。オレ達見舞いに来たのにお前がいねぇから、ダイゴとセンパイ、部屋で待ってんだぜ!」


まりんはお前を探してる…って言った。


「そう…」


返事はしたものの動かない。


「なんだよ。歩けねぇのか?」


側に寄る。

……手のむくみがヒドい。
ついでに言うなら、足もむくんでる。



(……兄貴の時みたいだ…)


とっさにそう思ったのは何故か。
顔色と体のむくみ。
亡くなる前の兄貴と似てたから。


「……お前…出歩いていいのか?……」


兄貴は歩いちゃいけないって言われた。
足がむくんでるから、いつ水が噴き出すか分からなかったから。


「…いいの…たまには日光浴くらいしたいでしょ…」


痩せた分むくみがヒドいように見えるのかな…って気もする。
でも、この暑い中、ヤツが長袖で着てるのは、きっとこのむくみを隠す為だ。


「部屋帰ろうぜ…」


声かけた。
でも、「きのした はるな」は動こうとしねぇ。