「うーん…コレなら食べれるかも…」
「…うまい棒ね」


コーンポタージュ味だって。気持ちわるっ。


「じゃあ私コレ!」


まりんがチョコ棒手にする。


「オレこれにしよー!」


ダイゴはガム。


「河口君は?」


丸い目がこっち見る。


「オレは…」


ドキドキしながら手を伸ばす。
小さなヤツの手見ると、あの時のことを思い出した。




………『そうちゃん…』


大事そうに呼ばれた。
ガキっぽいヤツが、妙に大人びて見えた……。




「……コレでいいや」


ラムネ。なんだか胸イッパイで、食えそうにねぇから。


「じゃあ、いただきまーす!」


まりんがチョコ棒の袋破る。
それに合わせてヤツも袋を切った。


「…おいしそ…」


言葉と顔が合ってねぇ…って、気づいてるのオレだけか。

小さな口が開く。
前から思ってたけど、唇の形がいい。
上唇はキレイな三角で、端っこがきゅっと上がってる。


(……なに観察してんだ……!)


思ってたことにテレる。
マジになりすぎんなよ…って、我ながらイヤになる。

ラムネの袋破った。
バラッ…!と、勢いよく飛び散ってく。

「何やってんだよ!」

ダイゴが呆れる。

「ほっとけ!」

慌ててかき集めるオレを、女子が笑った。


カチャ…と、ドアの音がして、そっちを振り向く。


「あ…ママ…」


ヤツの言った通り、入学式で見た、ド派手な人がドアの外に立ってた。