「河口蒼弥です。小学部からここの生徒で、バトミントン部所属。ヨロシク!」

早口で言って終わり。どうせ殆どのヤツは聞いてねぇから。

「…アッサリだな。じゃあ次、木下!」

「は…はいっ!」

オレの後ろが立ち上がった。何を言い出すかと耳を傾ける。


「き…木下陽菜…です。佐伯中学から来ました…佐伯中からは私一人なので友達もいません…どうぞヨロシクお願いします…」

力の抜けたように座り込む。
オレとダイゴに頼んだぞ…と言った、緒方さんの言葉の意味が分かった。

(そっか…それでさっきも羨ましがってたんだ…)


チラッと緒方さんの方に振り向く。ぱちん!と不気味なウインク。
ぞわ…と背筋が凍った。


「オレの名前は楠瀬大吾でーす!ダイちゃんと呼んで下さーい!」

ふざけ半分でダイゴが自己紹介。後ろにいるヤツも笑う。



全員の自己紹介が終わり、次から次へと配られるプリント。
持ち上がりじゃない『他所者』には、俺たち以上に提出物が多い。

「いいか!締め切りは厳守しろよ!それから親御さん達に必ず見せる事!」

帰り仕度を始める生徒たちに向かって、緒方さんが声張り上げる。
毎年のことだけに、ほぼ全員聞いてねぇ。


(…最初っからなめられてんな…緒方さん…)

気の毒な感じ。一昨年教師になったばかりの緒方さんに、年季の入った鳥達の面倒は見きれねぇようだ。