流れだしたメロディーに合わせて歩き出す。
次々と体育館に入って行く生徒たちを前に、オレの後ろのヤツはやたらとキンチョーしまくってた。


「……はぁ…」


大きな息を吐いてる。
取って喰われる訳でもねぇのに、大げさなヤツ。


「3組入場!」

先生の号令で発進。出席番号順で歩き出す。拍手の音が聞こえてくる。
次第に大きくなる音の中、ひたすら前を歩くヤツの後ろを追う。


「ソウヤ!ダイゴ!」

カレンさんの声に振り向く。
パシャ!と眩しい光。


「よせよ!」

ダイゴが小さく叫んだ。
ニコニコしながら見送られる。
いつまで経っても子供扱い。大人のオモチャじゃねぇってんだ!



席に着いて式典が始まる。
国家斉唱から閉式の辞まで。


(ながっ…)


アクビを噛みしめる。
左隣に座ってるヤツも同じ。でも、右隣のヤツは身じろぎもせず、前をじ…と見つめてた。



「新入生代表!楠瀬大吾!前へ!」

「はいっ!」


ダイゴが立ち上がって前へ行く。
ポカン…とした顔でオンナが見送る。


「あいつ、頭いいんだよ……いつも学年イチ!」


コソッと教えた。
驚くような目をしてこっちを見る。

(目が真ん丸だ…おもしれー…)


ふ…と思い出した幼い日のこと。
あの時も同じ様に、目を丸くして立っていた…。


(やめやめっ!考えねー!思い出さねー!)


今朝のことが頭をもたげる。
写真に写った兄貴の顔。
10年前経っても変わらないまま、年もとらねぇ。