ピンク色の桜が辺りを艶やかに染める4月。
期待を胸に新しい生徒が学校へ入学してくる中、私は高校3年生になった。
「今日学校は?」
ベットで気だるそうに眠る私に、理香がカーテンを開きながら問いかけた。
「入学式だから休み。てか眩しい」
目を細めながら答える私に、理香は小さく溜め息をつきながらカーテンを再び閉じた。
そしてコップにコーヒーをつぎ、私の前に置き、飲んでと促す。
「あんがと」
一口飲むと、コーヒー独特の苦い味が口内に広がり、私は煙草に手を伸ばした。
「入学式かあ、いいな…」
そう言った理香の横顔は、とても寂しそうで、思わず目を逸らした。
「そっか、理香は高校行かなかったんだっけ」
「ん、金無かったし」
一口頂戴と、私の煙草をくわえ、理香はふぅーっと白い煙を吐いた。
「可愛い子、沢山入るんだろうね…」
「まあ、顔は可愛い子はそこら辺に居るし」
私の言い方に不満を感じたのか、理香はむっとした顔でコーヒーを一気に飲み干した。