君と波








キーンコーンカーンコーン





「!?」




チャイムの音で現実に戻された私は、自分の手のひらを見つめた。


さっきまで確かに感じた温もりは消え、そこは冷たく冷えきっていた。




もしかしたら、今の夢は予知夢かもしれないな、とふと思った。



が、そんなことを考えるのはすぐにやめた。





「そんなこと、有り得ない。」





世の中男と女が一般的に結ばれ、惹かれ合う。


そんな中で世間に反して恋愛をしようとしている自分。


しかし、今現在まで本気の恋愛なんて出来ずにいる。



そんな自分に、あんな優しい温もりを与えてくれる女の子なんて居るはずがない。



もし居たとしても、この広い世界で巡り会える可能性なんて、無に等しい。



所詮私は、「本気になれない」なんて言い訳をしながら恋愛ごっこをするしかない。





「ーっ」



そんなことを考えてる自分が悲しくて、思わず笑いが出た。





でも、私はこの時まだ知らなかっただけだった。


温もりを与えてくれる子は、存在するということ。


それは必然的のように突然目の前に現れ、私に本気の恋愛を教えてくれること。


そんなドラマのような恋愛を自分がすることになるなんて、この時の私は本当に、想像もしていなかった…。