君と波




よく人に「どうしてそんなことするの?どうして1人を愛せないの?」と聞かれることがある。


そんな質問に私はいつもこう答える。


「だって、本気になれないから」


理香のことは勿論好きだが、本気か?と聞かれると首を傾げてしまう。


来る者拒まずをしていたら、その中でもしかしたら本気になれる人が見つかるかもしれない。


そう思っているうちに、ズルズルと色んな人の想いを全て自分のものにしていた。




「あの、もし良かったらまた会ってくれますか?」


女の子がモジモジしながら私に問いかけた。


私は今ではで身につけた営業スマイルで笑い、


「ん、会いたくなったらLINE頂戴」



とその子の頭を優しく撫でた。



「ありがとうございます!!」



お礼の言葉と共に予鈴のチャイムが鳴り響き、女の子は教室へと戻った。



私は一気に脱力し、その場に座り込んだ。



「あーー、だるっ」



コツンと壁に頭を軽くぶつけ、もたれかかると昨日あんまり寝てないからか、眠気が一気に襲いかかる。



「寝そ...」



そう言った3分後にはもう夢の中で、私は放課後の校舎に一人で立っていた。


夕日が辺り一面をオレンジ色に染め、自分の影がくっきり見える。



そんな中で顔はハッキリ見えないが、一人の女の子が私に近付いて来た。




「...誰?」



私の質問に答えず、その女の子は右手を差し出し、そっと私の手のひらを包みこんだ。



その手はとても暖かく、人肌をこんなに心地良いと思ったのは初めてだった。



そして、何故か私は泣いていた…。