君と波




その時の気持ちは、悲しいとかそんなじゃなくて…



自分の中の何かを失ったような、そんな感覚で


何も考えたくなくて、ひたすら歩いて…





その足で向かった場所は



「みつ…?」



理香の家だった。

今起きたのか、スウェットでドアを開く理香。


そんなことお構いなしに、ズカズカと家の中へ上がる。




そして、部屋に入るなり理香にキスをした。





「んっ…、みつ」





私が舌を絡ませる度、理香の声が漏れる。



「……」





一般的に聞いたら、そそる声だと思う。





でも、違う…





「みつ…?」





私が聞きたいのは、この声じゃない。




慣れてなくて、ぎこちなくてもいい。





華の声が聞きたい。




華と、キスがしたい…。





頭に浮かぶのは、さっきの華とのキスばっかりで



無意識に、理香と華を比べるという、最低なことをしていた…。