素直になれない私
椅子から動けないでいた
なんだかひどく眠たくて
頬杖をついた
グラスに残った
ワインに唇をつけて
少しづつ楽しむ
酔いが回って気持ちが良くなる
なんか色んなことが
どうでも良いような気持ちになった頃
足音が近寄ってきた
聞き覚えのある懐かしい音
そんな音でさえも
愛しく感じてしまうなんて
本当に私どうかしている
そんな気持ちを隠しながら
素知らぬ顔で、音のするほうへ
顔を向けた
そこには楽器をもった
ハルが立っていた
「指がなまっちゃうから吹いていい?」
そう言ってステージに上がると
楽器を構える
聴き覚えのある曲
STAND BY MEだ
誰もいないお店の中
独りで聴く初めての演奏だった
ちょっと音がかすれたり
音が飛び跳ねたり
ハルのSTAND BY MEは
彼と同じで可愛らしかった
演奏の最中にちょっと目が合う
彼が照れた顔で笑う
その笑顔にドキドキする
私だけに演奏してくれてると
思うだけで胸が一杯になった
本当にハルはズルい
こんなの反則技だよ
あなたの演奏聴くだけで
ご機嫌になってしまう
私の性格見抜いてるんだもん
しかも二人きりなんて
こんな気持ち
誤魔化すことできないじゃないか
演奏が終わったので拍手をする
ハルが楽器を持ったまま
隣に座った
「良かったよ、ハルの演奏独り占め
したの初めてだわ、ご馳走さま」
そう言うのが精一杯
ところがなぜかハルの方が
落ち着きがなかった

