とりあえず、人を探そう。そしてここがどこなのか聞こう
大きな島だ。
人は必ずいると思われる
なぜなら砂浜にいくつかの足跡が残っている
こういう時にケンジは、あせったり逃げ出したりするような人じゃなくてよかった
馬鹿でも、頼もしいじゃん
スマホのライトを点けて
あたしとケンジは、トンネルのような長い洞窟に足をふみ入れた
ライトを頼りに奥へ進む
時々、唸り声が聞こえてきてびくっと肩を竦める
ジャリッ
うっ!
あたしとケンジは息を呑んだ
人の骨だ 頭蓋骨が転がっている
量も半端じゃない。
それに腐ったような生臭いニオイをはなっていたのは人肉だ
体の器官が散らばっている
嘘でしょ、誰がこんなことするの?
「この奥にライオンでもいるのかよ」
「ライオンがいるわけないじゃん、こんな島に。いたらとっくに人間が銃で撃ち殺してるよ」
しかもライオンが人間をここまで残酷にするか?
ライオンの知識なんてそんなの知らないけどさっ。
暗い中、パニックになる
少しでもケンジと離れると怖くなる
あたしの泣き声をケンジが口を押さえて無理矢理押し殺す
見つからないためだ
泣いたら音で見つかってしまう
死んだほうがマシだよ、怖い思いするのなら
「おめーら、何しにきた」
ひっ!
背後から声がしてびっくりする
「は」
長いコートを羽織った色白の長身の男の子
だが、赤色の染みが所々目立つ
血飛沫をかぶったような………
もしかして彼がやったのか?
「聞いてるんだ、何しに来たんだ」
何しに来たって、
勝手にここに連れてこられたんだけど……
「気づいたらここにいたの。死んだはずだったのに。ここはどこなの?」
え、もしかしてお前らが?
彼は一瞬驚いた顔をした
「日野の妹だろ、お前」
亜弓のことを知ってる?
もしかして、亜弓に関係があるから連れて来られたって事?
だとしたらおねえはどこにいるの。
この人、おねえのことを知ってる。
「ここは鬼島だ。迷い人だと勘違いしてしまった、すまない」
彼はさっきと違う態度になり、謝った
鬼島……桃太郎??意味がわからん
それより、おねえのことを教えて。
「ねえ、日野亜弓はどこにいるの?!ねえ、知ってるの?」
「麻里子落ち着け」
落ち着けないよ
失踪したおねえのことが分かるかもしれないんだよ?
5年間、行方もわからなかったんだから
「ああ」
彼はあたしたちを家に招いてくれると言ったので、ついていくことにした
移動している間、彼は長い長い話をしてくれた


