×奈美×


それからまもなくして、昼食の場所に着いた。

「は…カレー!?奈良にきてカレー!?」


降りた直後に冬馬が叫んだ。


「ってか、その事実、しおりに書いてあるんだけど…」

龍斗が頭を掻きながら欠伸をする。


みんな、寝起きだそうで、だるそうだった。
しかし、元気な男子は男子で、女子は女子で騒いでいる。

「ここ、思ってたより暑いわ…奈美ぃー助けてぇ~」

美花が寄りかかってきた。


「ほらぁ、しっかりしてぇ~」


「こんなとこに、私を出すなんて…バスにもどりたいよぉ!!」


確かに暑かった。

4月の下旬にしては暑い。
美花の気持ちもわかる。


「ねぇ…奈美~どうしよぉ…やっぱりやめた方がいいのかなぁ?」


何の話だろう。

少し考えたが思い出した。
きっと龍斗のことだろう。決意はしたみたいだが、まだ、固まってはいないみたいだ。


「美花のしたいようにすればいいよ。」


ありきたいなことしか言えないが…。
それより何より、女子っていうのは本当にこのての話が多い。

特に恋してる最中の子だ。

「そんな無責任な…」


だって…


「責任あることないもの。」


美花はその通りだと目で言ってきた。


「あのさ、まだ、1日目だし。ってか、美花って龍斗と喋るよね?普通に。」


私がそう言った瞬間に口を押さえられた。

「あぁー!やめてよ!!声でかい!!」


さっきから同じトーンなのだが…と思いつつも、ごめんごめんと軽く謝った。


「だからこそだよ…言ったらきっと、もう話せなくなる」


なるほど。確かに。
きっとこういう女子は多いだろう。


「なら、言っちゃえば?」


と、私は思う。


「もし言って、話せなくなるようなやつなら、もう話さないほうがいいって。それにさ、龍斗、いいやつだから話さなくなるなんてないよ。
あいつを信じる意味でも…言ってみなよ。」


思っていることを全て伝えてみた。
文は長くなったが、きっと伝わっただろう。

こんなことを思っていた私の意に反した答えが返ってきた。

「奈美は、好くよりも好かれる方だから、そんな風に言えるんだよ…ごめん。」

そう言って、私の元から離れて行った。

(なんで…私、間違ったこと言ったのかな。美花。よくわからないよ…)