「そうかぁ…。世話かけたな」


  「先生知っていたんですか」


  職員室で、ゴリラ先生は椅子へ腰掛けるも辛そうな声で語る。


  「あいつはなぁ、プロの小説作家を目指してたんだぁ。だけどなぁ、イジメにあって指がな、ヤられちまったんだ」

  「そんな」

  「で、此処へ転校してきたんだ。詳しい話は親御さんに聞いたんだがなぁ。なんつーかなぁ。あいつ、荒れてんだよ」

 その後、詳しく聞いた。お父さんが絵本作家で、母子家庭。二人きりで生活しているという事。イジメが原因で利き手を失った事。ウホウホしか聞き取れなかったけれど、多分こんな事を喋ってた。


 「力になれねぇんだぁ、先生も悔しいなぁ、、」

涙声をあげるゴリラは何処かシュールだ。だけど、それ程彼の事を思うゴリラは他にいるのだろうか?ジャングル内駆け回ったとしてもこのオスゴリラだけだ。


  「名前だけ、彼の名前だけ教えてもらえませんか?」


  「 二年の狭間(はざま) 式(しき) だぁ」


  「先生、ありがとうございます!」