一ノ瀬さん家の家庭事情。

自分の部屋で着替えて、リビングに入ると、偉そうに真兄がソファに座りテレビを見て笑っていた。

そんなやつを一瞥しながらママの形見であるエプロンをつける。

赤いチェックのエプロンはママのお気に入りだったらしい。

少し前まではぶかぶかだったこのエプロンもだいぶあたしの体に馴染んできた気がする。

「愛、今日は何を作るの？」

「えっとー…」

「親子丼だよな！愛！」

あたしが答える前にソファから聞こえてきた憎らしい声。

「親子丼と！お味噌汁！それからおひたし！」

癪に障ったからわざわざ言ってやった。

「じゃあ俺は味噌汁作るね。愛、包丁には気をつけて。」

優兄は腕まくりをすると手際よくネギを切り始めた。

ほんっと、どっかの誰かさんとは大違いだよ！

双子ってことを疑いたくなるくらい。

まあ、顔はそっくりだけど！

優兄と真兄は身長までほぼぴったり同じ。

だけどあたしと玲は身長は中学一年生くらいからどんどん離れていき、今ではその差は二十センチ以上。