一ノ瀬さん家の家庭事情。

当時まだ学生だった二人が結婚するって言ってきたんだもん。

そりゃあ驚くよね。

「最初は反対してたんだ。まだ経済的にも不安定な二人に子供を育てるのは無理だって。でもあまりにしつこい暁に最初に妻が折れてね。」

でもそのしつこさがなかったら、あたしはここにいないんだよね。

最後まであたしを諦めないでいてくれた二人に感謝しなきゃ。

「…っと、ごめんね、ちょっとだけ仕事が残ってるんだ。そうだ、朔。暁の部屋に案内してあげなさい。」

「わかった、行こうか、愛ちゃん。」

あたしは先生の後をついて二階へ。

「ここが兄貴の部屋。」

キイ、と少し古くなった扉が開くと、そこはまるでまだ誰かが使っているかのような空間が広がっていた。

「そのままにしてあるんだ。俺も少し用事をしてくるから、好きに見てて。」

そう言うと先生は下に降りて行ってしまった。

あたしはそっとその部屋に足を踏み入れる。