一人で蹲り、どこだかわからない森の中で、膝に顔をうずくめて泣いていた。
もう涙を止める術がわからない。
どれだけ泣いても絶えなく溢れてくる。
どのくらいそうしていたのか分からない。
カサカサと、後ろの草が音をならした。
その音は徐々に近づいてくる。
「ん?だれかいんの?」
誰だかわからない、男の子の声が後ろから掛かった。
咄嗟に泣き声をおし殺した。
「ねえ、なにしてんの?」
その男の子はあたしに話しかけてくる。
お願いだから向こうに行って。
その願いも叶わず、男の子はあたしの真横にしゃがみこんだ。
「ねえ、なんで泣いてんの?」
不思議そうな声が隣から聞こえてきた。
「泣いてない。あなたに関係ない」
膝に顔を隠したまま、あたしはそう答えた。
無愛想に突き放す様な言い方をしたから、きっと向こうに行ってくれるだろうと思った。
なのに。
「なんで嘘つく?泣いてんじゃん」
全然向こうに行ってくれなかった。
なんで見ず知らずの人が、関わってこようとするの?
「ほっといてよ」
訳がわからず、誰かもわからず困惑した。
「ふーん、変なのー」
変なのはそっちでしょう。
もう早く向こうに行って。
近づかないでよ。
「……向こうに行って」
「うーん、無理」
「……なんでよ!?」
向こうに行くどころか、真横にごろんと横たわってしまった。
本当に何がしたいのかわからず、顔を上げて真っ赤になっているであろう目でその男の子を見た。
その男の子は、おとぎ話に出てくる王子様の様な、とても綺麗な顔をしていた。
「あ、やっと顔上げた」
ついボケっとその男の子を見つめてしまってしまった。
「目ぇ真っ赤じゃん、大丈夫?」
少し上体を起こし、その男の子は自分の袖であたしの目をゴシゴシと拭いた。
「……痛い」
「あっ、ごめん」
男の子はパッと手をどけ、上体を起こした。
