亜紀城「なに?なんかあったの?」




授業終了のチャイムがなり、片付けをはじめていると前から声がした。



結衣「わっ!」

わたし、花森 結衣は、その声に顔をあげる。


亜紀城「さっき授業中呼んだじゃん。」




結衣「え?」



あぁ。

あれは、ただ振り向いてほしかっただけなんだよね。


えっと…と、つぶやきながら片方の髪の毛を耳にかける。




亜紀城「まぁ。

別にいいけど。」


そう言うと亜紀城は、自分のポケットをあさった。


結衣「どうしたの?」



本当は、何をしようとしているのかわかっているくせに、そう言うわたし。


まぁ、あれしかないよね。



亜紀城「ん。」


そう言って、わたしの目の前に拳をつきだす。

ぱっとその手をあけると、その中には棒付きのアメがあった。



亜紀城がたまにくれるこのアメ。


亜紀城「やる。」




結衣「ありがとう!」




なんでくれるかはわからないけれど、とても嬉しい。


自分の思う精一杯の笑顔でお礼を言う。



亜紀城「うん。

じゃ。」




そう言うと亜紀城は、席を離れて友だちの方へ行ってしまった。


亜紀城は、友達も多くて、誰にでも優しくて、みんなに好かれる人。

だから、わたしとも話してくれる。



やさしい。




そんなことを思いながら、亜紀城がくれたアメをポケットにしまった。