パーフェクトフィアンセ


その言葉は知らない言葉で、でもどこか知っているような言葉。

アクアが少し顔をしかめているところを見ると、ほとんど流通していないような言葉なんだろうけれど。

どこかで聞いたことがあるような気がして、ウィングは記憶をさかのぼる。


何なんだろう、この感じ…


夢の中の出来事だったような気がしないでもない、記憶と呼ぶのにはふさわしくない。

そんな感じがする。


「アクアぁ、これ何語かくらいわかんねぇの?」

「一通りは知ってますよ人間語とかなら。でも、このイントネーションは人に出せません」

「はぁ?」

「例えば、鳥の鳴き声を話せる人っていませんよね?あくまでモノマネしか」

「そうやな」

「人間には出せないはずの音なんです。せーたいがどうやらこうやらの問題で」

「…うん」

声帯、のアクセントが違っていたが、生物学なのでひとまず置いておく。

「なあ、アクア?」

「何ですか?」

「なんか、疲れたんやけど」

「…」

呆れたようにアクアが膨れた。

「少ない脳みそフル稼働させて考え込んでたからじゃないですか?」

ウィングむかつくんです、とフグのように膨れる。

「鳥並みの言語能力のくせにお兄ちゃんの半分くらい理系なんですから」

「…」

判断基準をあいつにするな。

といってもアクアはアクアで譲歩したつもりなんだろうけど。

ウィングは複雑な表情でまた考え込んだ。



そして、唐突に思い出した。

あの言葉を、どこで聞いたか。


そうだ、あれは確か…


「…その言葉、ほんとに人間は話せないんやろな?」

「のはず、ですよ」

「…」


もしそうなら、リアルにあいつ人間じゃないよなぁ…


天才と何とかは紙一重ってこのことかとウィングは妙に納得した。