パーフェクトフィアンセ


『クラウン?』

バクバクと早鐘を打つ心臓。

ホセはうつぶせに倒れたクラウンをそっと抱き起こす。

重力に逆らわずにガクンと落ち込んだ頭を支えなおしながらホセは両手が濡れていくのを感じた。

『クラウン…!』

開かれたその瞳は、虚ろに宙を見ていて…


「あああああああっ!!」

絶叫で目が覚め、荒い息をしながらホセはあたりを見回す。

頭を抱えながらホセはもう何度目かわからないような夢にため息をついて近くにあった水差しから乱暴に水を飲む。

クラウンが死んだのはもうとうに両手の数を超えている。

一体なんだ、と酷い汗をタオルでぬぐい大の字になってまたベッドへ倒れこんだ。

恐怖、というにはあまりに生々しい夢。

きっと中心はダイアを看取ったあの時の記憶だろうが、肌の冷たさまでリアルだった。

「クラウン…」

ホセは這うようにしてクラウンの部屋の戸をなぞる。

一緒に寝てくれなんてまさか言えないし、それ以前にこんな夜中にたたき起こしたくない。

でも、不安なのは変わらなかった。

何を危惧しているか、そんなことはホセは知っていた。

クラウンに嫌われるか、彼女が死ぬか。

何でこんなことに、と楽しい毎日を嘆く。

「…腑抜けすぎだ、ジュエル・ホセ。お前は何者なのか思い出せ」

俺は、人だ…

教えてくれたのすらクラウンなのに、なぜ今になってこんなに恐れるんだろうか、とホセは天を仰ぐ。

いつ、クラウンの気紛れがなくなるのか、そればかり恐れていた。

でも今は、命すら危うい。

メビウスの輪ように永久の思考をなぞっているようで、ホセは嫌だった。

途中で止まらない思考のいたちごっこにいい加減嫌気がさしてきた。


俺は穢れた種族、吸血鬼。

だから何だ?

クラウンを手に入れたいと思うのは、人として、当然の心理だ。


この答えにたどり着くのに一体どれだけ費やしてきたんだろう。

朝になったらクラウンに、“王族”のことを話す。

一人で抱えてきた自分の運命を誰かに話す日が来るなんて。

少し信じられないような、夢のような。

そんなことを思いながら、ホセはまた、水差しの中身を口の中で盛大にぶちまけた。