「クラウン…?」
私は、静かに、静かに言った。
ホセ、喰って。
命令とも取られかねないその言葉に苦しそうにホセが笑う。
「無理だ」
すべての吸血鬼がなにより好み、大切に、優先する行為を、ホセは拒絶する。
「汚せっていうのかよ。お前を」
私は無言のまま起き上がって髪を耳にかける。
首筋をさらけ出して、ホセを起こした。
「やめろ。馬鹿な真似はよせ」
ホセは苦しげに目を逸らす。
そこで私は、悪魔みたいに微笑んで、窓に近づいた。
ホセはゾクッと身を震わせて声にならない声で叫んだ。
やめろ。
と。
「綺麗な新月」
吹き込んだ夜風が部屋のキャンドルを消して、明るい星明かりがぼんやりとホセを映し出す。
ゆっくりと、ホセに新月の力が満ちていくのが傍目に見てもわかったくらい。
吸血鬼の力が最も高まる時間。
新月。
暗闇。
条件は揃えた。
そして、それが効果を発揮したようで。
紅と金の、瞳。
哀しげな表情で、静かに、ホセは囁いた。
「…ごめんな。クラウン」
私は思いっきりの笑顔で、ホセを抱きしめてた。
大好きだよって。

