「確かに個人差でも片付けられるんだが、結論からいうとお前は悪魔でも天使でも神でも人間でもない」
「どういうことですか」
「昔、それこそこの宇宙のビックバンが起こった頃の話だ。創造神様の使いとして、聖霊族がこの宇宙を支配していた。
人間が人間を捨て去れないこの時代、宇宙は混乱を極めたという」
知ってるわ、とクラウンがいう。
ヘランっていう悪魔がライっていう天使に恋してたの!
もう面倒で面倒で…
そうか、とホセが肩を竦めてふうとため息をつく。
それがまた美しく、ウィングは理不尽さに絶望した。
「聖霊は星から力を得ていた。しかし星の声は聞こえない」
「じゃあどうするんだよ」
「当然だ。星の声が聞こえるものを創った」
「へ?」
「生き物であり、また無機物だ。宇宙に存在しないはずのその特質を持つ生物を聖霊は作り上げた。
聖霊と共に生まれ、育ち、そして死に行くそれは聖霊の存在する限り永遠を約束されたんだ」
「何だそれ」
「で、聖霊は消滅したんですか?」
「ああ。同時にそれもな」
それって言わないでよ。
It(イット)っていう名前があるの。
「初耳だクラウン。そんなことはどの伝来にも記されていない」
変なの、とクラウンが笑う。
ホセはスッと目を細め、清んだ池を見下ろした。
「恐れていたことだ。聖霊は存在しなければならなかったと同時に、存在してはいけない罪を犯した」
ぼんやりと光を持つ花々のなかからおもむろに一つ手折り言った。
「花を手折るより手早く」
池の水を掬い上げてホセはいう。
「両手を濡らすより清らかに」
空を見上げて言った。
「空の広がる世界より大いなる生命を」
手に持った花をポキリとおって絶望的に微笑んだ。
「永遠の中で奪った」
「創造神はこの世にいない」
「聖霊の罪は」
「その罰として聖霊は滅びました」
「明日の光は望めないな」
「ええ」
は?とウィングが頭をかいた。
「タイムスリップだウィング」
「絶対の法を犯してしまったんですよ」
ああ、知ってるわ。
時空を遡って創造神の後継ぎに会いに行ったんでしょ?
それで二人は死んじゃったんだっけ?
たしかあいつ、サニー何とかって名前だったわ。
「…すぐに気が付けなかったのは俺のミスだ」
思い出したわ。
サニー・サリナ。
それがその聖霊の名前。
そこで、すべてが終わったんでしょ?