なあクラウン、と猫なで声でホセが話しかけてきた。
甘くて綺麗な声。
聞いただけで眠くなって来る。
うとうとしはじめた私はそっとホセに体を預けた。
「俺にしてほしいことないのか?」
ないよ、といえば少し哀しそうにホセが笑った。
「不安だといえば言ってくれるか」
不安、の言葉で私は一気に目が覚めた。
何が、なんで、どうして、といった具合に次々畳みかけて聞くと困ったようにまゆをひそめた。
「お前は望めば、なんだってできるだろう?不安なんだ。お前のためにできることがないから…いつか俺に飽きるからそれを延ばしたい。一瞬でもいいから長くいたい」
馬鹿じゃないの、って思った。
こんなにボロボロになるまでずっと私を庇ってくれてたのに?
何が不安なの?
まるであなたが死んで行くみたいに。
どうして飽きることがあるの?
ホセ程完璧な人なんてこの世に…ううん、あの世にも居ないわ。
こんなに優しいのに。
不安がることなんて何一つない。
なんで変なことろで鈍感なんだろう。
飽きる訳ないでしょ、というとホセはありがとうって言った。
寂しそうに。
泣きそうに。
なんでそんな顔するの?
心底辛そうなホセに言いたかった。
私の方が不安なのに、って。