パーフェクトフィアンセ

はぁはぁと荒い息をしてへたりこんだ俺にクラウンが駆け寄ってきた。

「ァクア…ィタ…タスケテ…ォカシ…ナッタミタィ…」

ぼつぼつ言葉にならない報告を続けるとクラウンはあわてて俺を揺さぶった。

俺の名を呼ばれ、何度か殴られた。

痛いと言えば止めてくれた。

大丈夫、と心配するクラウンを俺は問答無用で抱き締めた。

「怖い」

拒絶されるのが怖い。

高望みはしないから、嫌われるのを知りたくない。

「クラウンだけで十分だ」

そう言えば優しく頭を撫でてくれていたクラウンがやっぱり優しく話しかける。

本当にいいの、と。

会いたい。

いいわけない。

会いたい。

できることなら抱きしめてごめん、っていいたい。

でも怖い。

拒絶されるのが何より怖い。

会って来れば。

「簡単に言うなよ」

どんな顔で会えと?

言うとクラウンは困ったように笑った。

考えすぎ。

会いたくなければ、こんなところ来ないから。

そういっていつの間にか流れていた一筋の涙を優しく拭ってくれた。

大丈夫だから。


その言葉は、どんなに安定剤を飲んでも得られなかった安心をいとも簡単に与えてくれる。


拒絶されたくない。

でも、会いたいから。



その時、トントンと可愛らしいノックが聞こえた。

「ホセ…?」



ほら、来てくれた。


優しいクラウンは悪戯が成功した子供みたいに笑った。